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コーヒー片手に、日々の何気ないことをつづった日記であります。


by the-sahara
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大人の夏休み~大仏殿へ

セミの鳴き声は、頭上から降り注ぐもの。まるでシャワーを浴びるように。
長い間ずっと、そう思ってきた。

荷物をホテルに預けて、炎天下の奈良を歩き出す。
目指すは、東大寺。
バスに乗ればすぐなのだが、当然ながら、汗をかきかき歩くことにする。

思った以上の暑さと道のりの遠さにぐったりし始めた頃、パッと視界がひらけた気がした。
なだらかな、淡い緑の、…あれは山だ!

若草山を遠くに見ながら、東大寺・南大門へ続く道を歩く。
車も人も、たくさんの鹿たちをうまくよけながら、進んでいく。ここでは、よそ見なんてしようものなら、まず最初に鹿にぶつかるに違いない。

巨大な金剛力士像を見上げながら、南大門をくぐる。
大仏様は、まだまだ先。
中門までの道をまっすぐ歩き、その門を右に見ながら、入堂口を目指す。
拝観料を支払い、いよいよ大仏殿へ。
廻廊を出てから大仏殿へ向かう途中、いやに蝉の声が小さいことに気がついた。
蝉が少ないのか、と一瞬思ったけれども、違うのだ。
木々が遠い。そう感じられるくらい、広いのである。

奈良に着いてから、帰るまで、これは何度も思ったことだ。
顔を前後左右に向けるだけでは足りず、何度も何度も上を向いた。
広い空、広い道。何もかもが広く、大きい。
一体どこに、空をさえぎるビルがあるのだろう。
ビルの存在を忘れるくらい、あまりに大らかな景色である。

頭がいい意味で痺れだした頃、ついに大仏殿にたどり着いた。
入口から仰ぎ見る大仏様はあまりにも大きく、思わず息をのんでしまった。

どれだけ多くの人が、頭を垂れ、祈り、すがってきたことだろう。
その遥かな時の流れを思ううちに、頭が働かなくなってしまった。

大仏殿の中を一周して外に出る頃には、まるで憑き物が落ちたかのように、穏やかで清々しい気持ちになっていた。
驚いたのが、ずっと心の中にあった疲れを感じなくなっていたことである。

ああ、落ち着くなあ。
次はもっと涼しい時期に来ようと誓いつつ、大仏殿をあとにした。
by the-sahara | 2008-08-26 23:19