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コーヒー片手に、日々の何気ないことをつづった日記であります。


by the-sahara
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四半世紀のお祝いに

鉛筆でも緊張するのだ。
真っ白なノートの、1ページ目、その1文字目を書こうとするときには。
ならば、ペンで書くときには、どれだけの緊張を要することか。
でも、どんな風に使うかによるが、ノートは基本的に自分だけのものである。学生時代のノートはともかく、大人になれば、そのノートを人に見せることなどほとんどないのではないだろうか。
だから、失敗しても、ちょっとのがっかりですんでしまう。
大事なノートは、なかなか使うことができないので、いまだに真っ白なページを保持していたりする。

では、真っ白な便箋を前にしたときはどうだろうか。
今度は、自分のためではなく、手紙を送る相手が存在する。
緊張は、ノートの比ではない。何度もペン先を下ろそうとしてはためらい、いつまでたっても、1文字目、一言目を書き出せないときがある。
でも、そんな便箋よりも苦手なものがある。
1つは、ハガキ。そして、もう1つは、カードである。
この2つに共通するもの、それは、書く分量が、あらかじめ決められていることである。便箋のように、書きたいだけ書くことはできない。
決められたスペースの中に、いかに短く、また書きたいことを書き込めるか。そんなことを考え出すと、本当に何度も何度もペンを下ろそうとしては戻すことになってしまう。

今年の誕生日も、友人からのメールが届いた。
平日だったこともあって、みんな仕事だったのだが、仕事が終わってから送ってくれる人もいて、それはとても嬉しいことだった。
今年は、奈良に住む友人から、奈良にちなんだプレゼントが届いた。奈良の四季をイメージした、使うにはもったいないくらいきれいな布巾で、ときどき取り出しては、来春こそ吉野に行きたいものだと考える。
そして、横浜に住む友人からは、空色のアルバムと、浴衣や着物の帯飾りが届いた。京都をイメージして、今年は「和」のものにしたよ、というメッセージ。深い金茶のアンティークな色と、大好きな雪の結晶のモチーフで、一目で好きになってしまった。
思いがけず、奈良と京都、2つの都が我が家にやってきたのだった。

プレゼントというのは、いくつになっても嬉しいものだが、最近何より嬉しいのが、「手紙」になってきた。学生の頃のように、会おうと思ったときに、気軽に会いに行けないからかもしれない。
2人の友人は、どちらもメッセージを同封してくれていた。
わくわくして読み始める。
「この世を去るときには、手紙に埋め尽くされて送られたいなあ」と思いながら。
横浜の友人は、光の加減で不思議な色に見える、青い封筒を同封してくれていた。
便箋かな、と思って何気なく取り出したそれは、2つに折りたたまれたカードだった。びっくりした。そして、嬉しかった。だから、私はほんの数秒、動くことができなかった。

読むのがもったいない。
でも、と意を決してカードを開く。そこには、カードいっぱいに、彼女の小さな字でメッセージがつづられていた。
そのたくさんの言葉を読みながら、私は何の文字も書かれていない、まだ真っ白なカードのことを思った。
この余白を、埋めてくれたのだ、きっといろんなことを考えながら。
それが、どれだけ嬉しいことか。

そのとき感じたことを、まさにメールを打つように、ハガキやカードや、小さな便箋に書いて送れるようになりたいと、近頃強く思う。
歌が詠めるなら、歌に託したいくらいだ。
短く、でも、伝えたいことはしっかりと伝わるような手紙を、書けるようになりたい。
まずは、カードやハガキをマスターすることからかな。

今年も、嬉しい誕生日を迎えることができた。
言葉では、本当は言い表せない。言い尽くせない。
それでも、「ありがとう。」
by the-sahara | 2007-09-27 23:12 |