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コーヒー片手に、日々の何気ないことをつづった日記であります。


by the-sahara
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上賀茂神社

何一つ、遮るもののない広い空。
遠くには、糺の森のような木立に山。
京都にこんなところがあるなんて、私はまだ全然、京都を知らないのだと思い知る。

赤い鳥居と楼門以外は、ほとんどが古色を帯びた社殿が建ち並ぶ。
上賀茂神社。
京都に通いだしてから、ずっと訪れたいと思っていた神社である。
結婚記念日に、その願いが叶うなんて嬉しい限りだ。

二ノ鳥居をくぐって、辺りを見渡す。
まず目を奪われたのが、黒にも見えるくらい、深い緑の木々を背景に立つ、白無垢の花嫁だった。
ちょうど写真撮影の最中で、その光輝くような姿に、ただため息ばかりがこぼれた。
末永くお幸せに、と願わずにはいられない。

境内をどんどん奥まで進み、中門の前までやってきた。
通常は、ここで参拝をする。
参拝をすませ、さあ行こうかと左を向いた私は、そこで足を止めた。
巫女さんの頭の上に、こんな言葉がある。
特別参拝。
国宝の本殿と権殿を間近で見ることができる。
そんな馬鹿な、と目を疑うも、確かにそう書かれている。
ならば、迷う必要なんてない。予定外の特別参拝をすることに決めた。

まずは「直会殿」という、お祓いをする建物の中で、神職のお話を聞く。
上賀茂神社、正式には、賀茂別雷神社の神話を、簡単にお話ししてくださる。
最後に、お祓いをしてもらい身を清めたら、いよいよ本殿へ参拝できる。

本殿と権殿(本殿の修復などのときに、ご神体を一時的に安置する建物)以外の社殿は、その多くが1628年頃に建造されたものだという。
300年以上前の建物の床に立って、約140年前に建造された本殿・権殿を眺める。
信じられないくらい、長い時が流れている。

「これは、平安時代の貴族が見た景色と同じなのです。」
と語る、神職の静かな声まで、夢のように遠い。
雨が、真っ直ぐに降り注ぐ様があまりにも綺麗で、目が離せなかった。
何も考えることができない。

本殿を修理するたびに受け継がれる技術。
それを守り伝える人が、どの時代にもいたこと。そして、それが今まで伝わってきていることに、心が震えた。
何かを思う気持ちは形になって、ちゃんと時を超えるのだと知る。
どれだけ多くの人が、この神社を訪れ、大切にしてきたことだろう。
その思いに、頭が下がる気がした。

清々しい気持ちで、神社をあとにする。
きっとまた、訪れることだろう。
次は、よく晴れた空の下を、歩いていきたいものである。
by the-sahara | 2009-05-12 22:48 | 寿